英語を話すための文法理解にもってこいの参考書「一億人の英文法」を英会話講師の目線でレビューします。
約700ページある参考書ですが、説明が分かりやすく、ネイティブスピーカーが持つ英語の感覚を理解し会話力へ繋げていけるので、お勧めです。以下に対象者のレベルやおすすめする理由について、具体例を挙げてご紹介します。
目次
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対象者
中学程度の英文法の基礎知識がある人で、高校生、大学生、社会人、TOEIC や TOEFL など資格試験を目指す人や英語学習者全般。特に初級者、中級者で文法のおさらいをしっかりやりたい人、またネイティブスピーカーがどのような感覚で英語を使っているのかを理解し、自然な英語を身につけたい人、堅苦しい文法書で挫折したことがある人に向いていると思います。
本の特徴
- 実際に英語を使うための文法書
- ネイティブの持つ感覚がわかる
- カジュアルな説明で楽しく読める
- 英文法を学ぶだけでなく会話に生かせる
- 固い文法用語があまり使われていない
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おすすめの理由
本の特徴と被る部分が多いですが、おすすめの理由は次のとおりです。
- 英語をイメージで捉えられるようになる
- ネイティブの英語の感覚がわかるようになる
- 実践的で使える例文
- 読みやすく分かりやすい
- 話す英語につながる掘り下げた説明
それぞれ説明します。
英語をイメージで捉えられるようになる
この文法書はイラストが豊富で、単語や表現、文の構成などをイメージとして捉えやすいのが最大の特徴です。英語を日本語に訳して、ただ文法の法則に当てはめるのではなく、英語を感覚的にイメージで理解できるようになります。
例えば some の使い方の説明で、
some は「いくつかの」と訳されることもありますが、そのイメージは「ボンヤリある」。数量が定かではないモノがボンヤリと意識される単語です。可算名詞にも不可算名詞にも使うことができますよ。
そして様々な some に関するイラストの一つに、輪郭のはっきりしない人の姿が描かれ、上部に somebody と書いてあります。
some の「ボンヤリ」は some を使ったいくつかの単語を考えてみれば納得できます。 someone, somebody(誰か)、 something (何か)、 somewhere(どこか)、sometime(いつか)。どれも特定の人や場所などが思い浮かばないボンヤリとした表現ですね。ボンヤリーそれが some の意識なのです。
また、どちらも「いくつかの」と訳される単語 some と several の雰囲気の違いとして、ボヤけてはっきり見えない3つの店のイラストと、くっきり見える店のイラストが並んでいて、次のように書かれています。
I know some/several good golf shops.
いいゴルフショップ知ってるよ
ここで some は漠然と「いいゴルフショップを知ってるよ」何軒かも、具体的にどこの店かも、思い浮かべていません。一方の several は、はるかにくっきりした単語。具体的なゴルフショップをいくつか頭に置いて話しているんです。
とても分かりやすいですね。
ネイティブの英語の感覚がわかるようになる
そして、一つ一つの単語や表現をネイティブがどのような感覚で使っているのかがわかるようになります。
例えば、基本的な動詞 go を日本語訳「行く」で捉えていると、十分に使いこなせない、と。英語の go は日本語よりずっと豊かな使われ方をする、ということで go のイメージのイラストと共に次の例文が挙げられています。
I don’t know where the money goes.
どこにお金が消えちゃうのかわかんないよ
Will these stains go?
このシミ消えるかな?
This old sofa has to go.
この古いソファ捨てなくちゃ
go のイメージは「ある場所から去って進行していく」その動きです。日本語訳ではなく、イメージに習熟することが基本動詞制服の最低条件なんですよ。
実践的で使える例文
そのまま使える日常的な例文で溢れているのも良いところだと思います。学んだ文法を使って、すぐに会話に生かせる例文というのは、重要なポイントです。いくつか例を挙げますが、カッコ内はどこの項目に出ているかを表します。
Unbelievable! Apples are selling at just ¥200 a kilo.
信じられない!りんごがキロあたりたった二百円で売ってる!(前置詞の選択)
Try swinging the bat more slowly.
バット、もっとゆっくり振ってみなよ(比較級の表現)
My Mom always nags me.
お母さんは僕にいつもガミガミ言う(頻度副詞)
I never wear any make-up. Oh, don’t you?
私、決して化粧しないの。え、しないんだ?(あいづち疑問文)
I would start by spending only on absolute necessities.
僕ならどうしても必要なモノにお金を使うことから始めるな(If を述べない仮定法)
このように生きた例文を読むと使ってみたくなりますよね。
読みやすく分かりやすい
従来の堅苦しい英文法書とは違い、説明の口調もカジュアルでイラストが多く、読みやすく分かりやすいです。なので面白くてどんどん先を読みたくなります。日本語話者が間違えやすい使い方などにも触れています。
基本動詞の項目では、日本語訳を覚えるだけでは使いこなせないとして、会話に頻出し幅広い用法をもつ動詞がイメージと共に解説されています。
例えば come の説明の中に 「come にするか go にするか」というコラムがあり、
Husband: We’re going to be late!
夫:【玄関で待ちながら】もう遅れちゃうよ!
Wife: OK, OK. I’m coming.
妻: はいはい、今行くわよ!
ここで going ではなく coming なのはなぜか、という話が出てきます。
日本語の「くる」「行く」がいつも話し手のいる場所を中心に使われるのに対して、英語の come と go は話題で注目されている場所を中心に選ばれるからです。この場合、注目されているのは夫の場所。そこに近づく動きだから coming となるのです
なるほど! と納得がいく説明ですね。
話す英語につながる掘り下げた説明
文法に沿った英語の使い方だけでなく、単語や表現の仕方を一歩踏み込んで説明してあるので、細かいニュアンスを掴み、会話に生かすことができます。
「強い単語とのコンビネーション」の中で、 not の後に強い単語を持ってくることで言いたいことを直接言わず遠回しに表現するのは、良好な人間関係を築くためのテクニックだと書かれています。例として、
She is ugly.
彼女は醜い
She is not very beautiful.
彼女はあまりキレイじゃないね
That’s wrong.
それって間違ってるよ
That’s not exactly right.
必ずしも正しくないな
Your son is stupid.
息子さんアホですな
Your son is not the brightest student.
最も優秀な学生というわけではありません
私もアメリカ人の友人が誰かをよく思っていない時に、"I’m not a big fan of her.(彼女の大ファンというわけではない)と言っているのを聞いたことがあります。まさにここで言われている表現ですね。
その他
必要最小限なことだけでなく、更に英語の知識を深めたい方に Advanced 又は Ultra Advanced というコラムが所々に載っていて、英語を勉強するのが楽しくなってきます。
形容詞を重ねて修飾する、という説明の中で「日夜量産」という Ultra Advanced コラムがあり、
複数の単語で独特の形容詞を作る。自分でお気に入りのモノを作っても構いませんし、長さも問いません。シャレた「ああ、なるほど」と思わせるフレーズがー特に小説などではー日夜量産されています。
I can’t stand her I-know-better-than-you attitude.
僕は、あんたより知ってるわって彼女の態度が耐えられないんだよ
中略
ヒマがあったら作ってごらん。傑作ができるかも。
この Advanced と Ultra Advanced のコラムは必ずしもマストの知識ではないですが、英語を更にグレードアップさせるには非常に役に立つので是非目に通すことをお勧めします。
マイナス点
索引
考えられるマイナス点としては、索引がないので何かを調べたい時にどこを見ればいいのかわからないということがあります。索引は東進ブックスの公式サイトからダウンロードできるようになっていますが、本から直接引けないのは不便だと感じます。
ページ数
700ページの長さなので、短期間に一通り文法をおさらいしたい人には向かないかもしれません。しかしこれだけの深い内容なので、短くするのは無理だし、時間をかけても読む価値は十分にあります。
音声有料
音声はアプリでダウンロードできますが 、別途650円かかります。語学の学習には音声は大事だと思うので、音声別料金はネックだと思います。
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まとめ
「一億人の英文法」は次の点で非常に優れた英文法書なのでお勧めします。
- 英語をイメージで捉えられるようになる
- ネイティブの英語の感覚がわかるようになる
- 実践的で使える例文
- 読みやすく分かりやすい
- 話す英語につながる掘り下げた解説の仕方
私も一冊キープしています。
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