先日、英会話のレッスンで生徒さんと話していて、久しぶりに思い出したニューヨーク時代の目からウロコの異文化体験と、しばらく滞在したメキシコ人家庭でのビックリ体験について書こうと思います。
常識というのは、育った文化や地域によって、はたまた個人によって全く違うものだというわかっていた筈のことを目の当たりにした貴重な体験でした。
同時に、常識は同じ文化を共有する人にとっては関係をスムーズに保つのに必要であっても、別の文化圏の人にとっては、かなりどうでもいいことだったりするんだな〜と思ったり。海外/異文化に暮らすことは、自分の常識を常にアップデートできて面白いです。
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水漏れとかどうでもいいじゃん @ニューヨーク
当時の私は、ニューヨークマンハッタン北部のドミニカ共和国出身者の多い地域にひとりで住んでいました。アパートの私の部屋は1階にあり、その真下にある地下の部屋が『スーパー』と呼ばれる管理人の部屋でした。
スーパーは superintendentの略で、アメリカ英語で『アパート管理人』の意味です。日本と違いニューヨークのアパートでは、管理人も同じ建物に住んでいることが多く、私のアパートは、住民の多くがドミニカ共和国出身者というだけでなく、スーパーも同国の男性でした。
ニューヨークのアパートは築年数が経っている建物が多いので、いろいろなものが壊れます。雨が降ると窓枠から水が入ってくるとか、夏の湿度の高い時期に木製ドアが膨らんでトイレのドアが閉まらないとか。まぁ、現在住んでいるマレーシアのモノの故障頻度に比べればカワイイものですが。笑
なので何かが故障するたびに、アパート専属のスーパーを呼んで直してもらうことになるので、スーパーとは良い関係を築いておくと諸々スムーズにことが運びます。
彼の名前は確かエドワルドだったかな?50代半ばくらいの陽気なヒスパニック系のおじさんで、お孫さんを含めた3世代で地下の私の部屋の下に住んでいました。スペイン語スピーカーで英語はさほど流暢ではなかったんですけど、必要なことは私のなんちゃってスペイン語も交えて、だいたいコミュニケーションが取れていました。
ある冬の日の朝に、私の寝室の暖房機から水が漏れていることに気が付きました。ラジエーターと呼ばれる、アパートに備え付けられた暖房機の中をお湯が流れて熱くなり、部屋を温めていくタイプのものです。床がフローリングだったのですが、暖房機の前に大きな水たまりができていて目に入ったのです。
とりあえず床を拭いて、台所からタッパーを持ってきて、水がたれてきている下の部分に置きました。スペース的に小さなモノしか入らなかったので、そうですね …マグカップ3杯くらいの液体でいっぱいになってしまうサイズのタッパーだったと思います。
すぐエドワルドに電話をしました。当時は気軽にスマホでメッセージを送ったりする時代ではなかったんです。そうしたら、今日は仕事がいっぱいあって忙しいので夕方5時頃になったら行ける、というような答えが返ってきました。何がどういう状況なのかを伝え「多分あなたの部屋の寝室の真上だと思う」ということも言いました。
それから、タッパーの水が一杯になっては捨てて、また空のタッパーを暖房機の下に置く、ということを何度繰り返しただろう… 夕方になっても彼は現れず、7時ころになってもう一度電話をしたら「ソーリィ ソーリィ、夕飯を食べたら行くから」と。そして更に今か今かと待っていたのですが、結局その晩彼は現れませんでした。連絡もなし...
眠るギリギリの時間まで、タッパーの水を捨てていましたが、次の朝起きたら床に巨大な水たまりができていました。ニューヨークの古いアパートは各階の間のコンクリートが薄く、音も筒抜けだったりします。水漏れを防ぐために各部屋には洗濯機設置は禁止です。
あぁきっとエドワルドの部屋にも天井から水漏れしているんだろうな、どうなっているんだろう… と気にしながら床を再び拭いて、彼に電話。
すると、昨夜来なかったことにソーリィもなく「今日も忙しいんだよね、午後には行けるかも」と言うので、『えっ…』 言葉が出ず。笑
気を取り直して、何時ころに来るのかを聞き、
と言いました。そうでなくてもうつ病の妊婦だった時で、メンタル色々ヤバかった。
その時のうつ病体験記はこちらへ↓
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【 シングルマザーの海外生活 】ニューヨークうつ病体験記
ツイッターで「$ ...
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ですが、案の定約束の時間になっても彼は来ませんでした。
夕方になって再び電話 => 「わかった、これから行く!」 => 来ない 笑笑
さすがの私も頭に血が上って、夜の11時を過ぎた頃、地下の彼の部屋に行きました。最初何度ドアベルを鳴らしても出てこなかったのですが、中から音が聞こえたので在宅なのはわかっていました。
しつこく鳴らし続けたら、ドア越しに暢気な声で「誰ですか〜?」というので、「あなたのことを永遠に待ち続けている上階の住人、Yokoです!!!!!」と大きな声で言ったらやっとドアが開いた。ぎゃ〜っ、パンツ一丁!笑
お酒でも飲んでいたのでしょう。赤い顔をしてニコニコしているエドワルドに、「あなたが来るというからそのつもりでずっと待っているんですけど?水でフローリングの床を濡らさないように、あなたの部屋に漏れていかないように、ずっとタッパーの水を替え続けているんですが?」と英語で言いました。
すると私の顔をポカンと見ていたエドワルドが、少し間をおいてこう言った。
” Yoko, Just don’t worry about it!”
ニュアンス的に「まぁまぁ、気にしなさんなって」という感じでしょうか。
この瞬間に目の前でパン!とくす玉が割れたような明るい衝撃が。
そうか!気にしなくていいのか。自分が借りている部屋の暖房器具が水漏れしていても、そこから階下の部屋に水漏れしていても、別に慌ててどうにかしようとしなくたっていいんだ …
アパートを管理している側の人間が、すぐ修理が必要と感じていない。そして、一番被害を被っているはずの階下の住人本人が、どぉとも思っていないのに、どうしてこの私が心配する必要があろうか。笑
私はフローリングの床が傷まないようにタッパーで漏れてくる水を受けなくていい。それで床が水浸しになったなら拭けばいい。ただそれだけのこと。なぁ〜んだ。
これって言葉にするとサラッとしているんですが、私の中では大きな気づきになりました。自分が「こうあるべきだ」と思い込んでいることって、少し引いて広い目で見たら必ずしも絶対ではない。違う文化圏の人にとっては、どうでもいいことだったりもする。
自分は水が垂れていたら拭きたくなるし、なるべく周りに迷惑をかけないようにと思ってしまうんですけど、これって万人/万国共通の感覚ではないんですね。
ワンコのオシッコは明日でOK @メキシコ
似たような話で、以前メキシコの家庭に一ヶ月滞在したときのこと。そのファミリーが家の中で飼っていたワンちゃんが居間のド真ん中のタイルの床にオシッコをしました。皆でテレビを観ていたので、ファミリーはそれを見て知っていますが、誰も何もしない。笑
当時まだ2歳だった息子がそこいらじゅう走り回っていて、オシッコに滑って転ぶのでは、と心配になり片付けようと思うのだけれど、掃除用具のありかがわからない。
それでそのファミリーに言ったら「ノ プロブレマ!マニャーナ!(問題ない、明日!)」と言うんです。そこの家庭では、お掃除系の家事は1日に1度朝、と決まっていて、朝 • 昼 • 晩と食事を作っても、山のような食器を洗うのはまとめて翌朝だけなんですね。
え〜っ!マニャーナ(明日)まで犬のオシッコを拭かないっ …. なんというカルチャーギャップ … 。で、一旦は引き下がったのですが、オシッコに気づかず走り回っている息子を見て、こりゃヤバい、と。
それでもう一度言ってみたら、そこのお父さんが、OKわかった、という素振りで奥へ行きました。やった!モップでも持って来るのかな〜と期待したのですが、しばらくして新聞紙を手に戻って来た。そしてそのオシッコの上にバサッと新聞紙をかけてオシマイ。再びソファに座ってしまいました。それ以上はやっぱり『マニャーナ』なんだそうです。笑
一応ファミリーの名誉のため書いておくと、毎朝ファミリー総出で家中を掃除する、きれい好きな家庭でした。
自分は日本人の中ではかなり大ざっぱな方だと思うのですが、このドミニカ人やメキシコ人に比べたら全然違う … 神経こまか過ぎ w
彼らのなんとおおらかなこと!あんな風に何があってものんびり構えていられたら、ずいぶん楽に生きられるんじゃないかな〜。
ということで、異文化の中にいると、自分の中の『当たり前』がどんどん壊されていってホント楽しい!
オシマイ